百合。同性愛に嫌悪のある方はバックリターン。
おんなのこばかりのイラストをのそのそ更新。
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とても久し振りに外に出た。
今が何月何日とか細かいことは知らない。
ただ何となくだが今が春か初夏あたりではないかということは、肌や視覚で感じ取れた。
青々と繁る草木や、瑞々しく絢爛たる花々。
季節はこんなにも華やいで、躍動している。
自然に対してこんなに身近に感じたのは子供の頃以来だ。
何処までも続くと思わせるほど広大な敷地は紗由香が所有する庭の一部で、この緑は人工的に造られたもの。
そう思うとまるで私のようだと切なくなった。
私もこの緑も、「ヒト」によって支配されている。
大切にされているとも思うけれど…
「千穂、どうしたの?」
隣を歩く紗由香が微笑みながら訊いてくる。
2人でデートでもしている気分なのだろうか…浮かれているまではいかないにしろ、いつもよりは少し機嫌が良いみたいだ。
「緑が、綺麗だなぁって思って…」
「そうね。とても綺麗………。あ、今度お部屋にお花を飾りましょうよ」
「それ、いいかも。季節を花で感じれるね」
此処から出してくれたら部屋に花を飾らなくたって、自由に季節を感じることが出来るのに。
思っていたって口にするなんて当然出来る筈なく、心の中だけでぼやく。
「今度カスミに頼んでおくわね」
「カスミさん…紗由香のお気に入りの?」
「えぇ。彼女、華道の嗜みがあるようだから。出来上がったらその都度持ってくるように言っておくわ」
「楽しみ」
いつもの作り笑顔ではなく、本心から「楽しみ」と思えたのでちゃんと微笑えた。
頭の隅でもうひとつ理由があることも解っている。
これは、紗由香以外の誰かと会うチャンス。
今歩いている庭だって人の影すらない。
せめて此処から出る為に、何か切っ掛けがあるだけでもいい。
ただその「カスミさん」と会うことが私にとって助けになるかどうかは分からない。
「お気に入り」であるカスミさんが「お嬢様」の過ちを見てどう判断するか…
もし活けた花の受け渡しの間に紗由香が入れば、確実に会うことはない。
(誰でもいい。お願い、誰か私に気付いて……!)
私は藁にも縋る思いだった。
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