モヤモヤ

「今日の夜だけど、晩ご飯要らないから。…あと、明日の朝の分も。」

「………」


こんなことは初めてだった。

同じ時間に食卓を囲むことなんて普段からなかったことだけれど、どれだけ帰りが遅くなっても「いらない」と言われたことはなかった。

夜に飲み会があると、その日の晩ご飯が明日の朝ご飯になる。

今回はそういった感じでもなかった。


「そう。」


としか言えなかった。

仕事だからと言われれば、口を出せない。

入浴の為だけに帰ってくるなんて言っているけれど、あまり信じられない。

信じたいけど、やっぱり信じられない。

疑う気持ちが膨らむ。

どうして人間ってマイナスな想像は果てしなく広がってしまうんだろう。

本当に、際限なく悪い未来予想が浮かんでくるばかりで、軽い自己嫌悪で落ち込みそう。

いや実際、落ち込んでいる。


「何か軽いものでも買ってこなくていいの？おにぎりとか。」

「いや、自分で買うよ。」


突き放された感が小さく胸を痛ませる。

小さいなぁ、自分。


こんなことを考えていることなんて知られたくないよ。

だから黙って物分かりのいい人間を演じてみる。

だって貴女に呆れられたら、それこそブルーのどん底。

あぁ、小心者。



どうしようもないモヤモヤを抱えたまま、私は独りでベッドに入る。

今日は誰も入って来ないダブルベッドで。