百合。同性愛に嫌悪のある方はバックリターン。
おんなのこばかりのイラストをのそのそ更新。
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私は甘えたがりだ。
だからって甘えられるのは嫌いじゃない。
でもベタベタされるのは嫌い。
特にこんな暑い日なんか、室内じゃなきゃくっつけない。
「そろそろ勘弁してください」
「いーやー」
真夏の炎天下とは程遠い、むしろ寒気すら感じるオフィスの会議室。
普段使用することもないので、1ヶ月の内20日くらいはフラットな状態。
そんな場所で社員達が昼食をとるのは日常的な光景(食堂という立派なものはこの会社にはない)。
そしてこの光景も日常的・・・いや
これが日常的なのだと知っているのはこの場に居る私と、後ろからへばりついている先輩だけ。
会議用の簡易パイプ椅子に座っている私の後ろにわざわざ同じ椅子を持って来て、後ろからへばりついて脚を絡めてくる先輩。
はっきり言って妙な光景だ。
誰にも目撃されたくない。されたら次の日から奇異の目で見られること間違いなし。
いつもこんな姿勢という訳ではないけれど、「くっつく」行為はもはや日課となりつつある。
昼食も食べ終え紙パックのジュースを啜りながら後ろ目で先輩を見遣ると、やはりというかいつもの満足そうな顔がこちらを向いていた。
「・・・飽きないんですか」
「飽きるわけないじゃない。嬉しいのに」
「嬉しい・・・?」
楽しいの間違いじゃないの。
なんかこう、ぬいぐるみでも抱っこしている無邪気な少女のように見える。
「嫌そうな顔してても抵抗しないとことか萌えるわぁ」
「え、嫌そうな顔してましたか私・・・」
「ふふ」
「すみません」
してたっけ?
でも先輩の前でそういう顔しちゃうってのは社会人としても良くない。
私ってまだまだだなぁ。
「・・・ねぇ、抱きつかれるのってあまり好きじゃない?」
「・・・・あー・・・そうですね、どちらかと言えば抱きつくほうがいいです」
「甘えたがりかぁ・・・可愛い~」
「・・・え・・・と」
少し図星。
先輩が2人きりの時以外は本当に「先輩」の顔や態度で接してくるものだから、それを少し寂しく思ったりとか
私と同期の子を褒めてたり励ましたりしてるのを見た時とか、帰りに誘われなかった時に少し妬いてたりして。
こうしてくっついてくる先輩を独占したい。
他の誰かにもこうやってへばりついたりするのだろうか。
嫌だ、嫌だ、
甘えたい。
友情とか尊敬とか愛情とかどれなのか分からない。
でも私だけにこうであってほしい。
先輩の顔を見ながらここ最近ぐるぐると悩んでいることを考えていたら
「・・・明日、海に行かない?」
「えっ?」
「海、嫌い?」
「・・・海辺の水族館なら、よく行きます」
「ふーん?・・・」
「え、あ、姉と甥っ子とよく行くので」
「じゃあ、案内してもらおうかなぁ」
先輩を独占したいと思っていたら、デートに誘われた。
デートと思っているのは私だけだけど、若干沈みかけていた気分は急上昇した。
勤務時間が終わり、帰り支度をしていた私の元へ先輩がやってきた。
今日は一緒に帰れないと聴いていたので、どうしたのだろうと席を立った。
「明日、駅前で集合ね。時間はまた連絡するから」
「は、はい」
いつもの笑顔で、いつもの声で
先輩は去りながら、私を悩ます一言を残していった。
「明日のデート、楽しみにしてるわね!」
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