百合。同性愛に嫌悪のある方はバックリターン。
おんなのこばかりのイラストをのそのそ更新。
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ドアの開閉音がした。
「昨日、あなたの家族が捜索願を出したそうよ。」
「………ん――…?」
紗由香が部屋に入って来たと同時に、気絶だか寝てたんだか分らない私の頭が覚醒した。
暫くボウッとしたまま、彼女の言葉を反芻する。
「かぞく…そうさ…く?」
「思ったよりも早かったわね。独り暮らしなのに、何故バレるのがこんなに早いのかしら…」
本当に不思議そうな顔をする彼女を見て、疲労が一層溜まった気がした。
私には思い当たることがある。それを言うとまた何をされるのか……身をもってうんと学習済みなので、黙っておく。
……きっとカケルだ。1週間前に別れたばかりの、今でも私の好きなひと。
こんな状態じゃなければ、昨日のお昼頃にカケルと会う筈だった。私の部屋に置いていた彼の荷物を渡す為に。…そのあと、一緒に昼食を食べる為に。
カケルと私の両親には面識がある。私がいつまでも帰って来ないから、きっと連絡してくれたんだ。
別れたばかりで彼への未練が断ち切れない今だからこそ、こういう目に遭っているからこそ、恋しい気持ちはより膨らんで、胸が痛くなった。
心配してくれることがとても嬉しくて、とても辛い。
もう辛くてもいいから、今カケルに会いたい―――…
涙が出そうだ。
「気に入らない」
冷たい声で、眼で、小さく嗚咽を漏らす私を見下ろす。
彼女の前でカケルのことを考えていたことに気付いたみたいだった。
「私を受け入れてよ」
「………」
「どうして私じゃ…駄目なのよ……!」
半ば叫ぶようにして紗由香が問う。けれど私は答えられない。
答えてしまえば、無言でいるより恐ろしいことをされる。
少しでも痛みを感じたくない。だって今は胸の痛みだけで泣けるくらい弱っている。
恋人プラス親友を失うダブルパンチで相当参っているので、そこに新たに傷を作るのは避けたいと思った。
この部屋に連れて来られる数時間前、紗由香は私に告白した。
「ずっとあなたが好きだった」
「さゆ・・・」
「私じゃ、駄目?カケル君のこと、まだ好き?」
質問しているのに、答える隙を与えないようだった。
緊張の為か唇が震え頬も紅潮して、実に少女らしかった。
告白される側が男だったなら喜びに沸くシーンなのだろうけれど、私も女だし、同性愛の存在は知っていても当事者になるつもりなんて全くなかった。
その時だって頭の中は失恋ショックでカケルのことばかり考えていたから、尚更。
そんな中親友だと思っていた紗由香からの告白に、私は上手く言葉を返せずにいた。
親友に戻ることは出来ないのだろうか。
出来ないんだろうな…
そうきっと、不可能なんだ。
確信に近かった。
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