百合。同性愛に嫌悪のある方はバックリターン。
おんなのこばかりのイラストをのそのそ更新。
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「最近、猫を飼い始めたそうじゃないか」
「えぇ。でもパパには見せてあげない」
「…おや、何故かな?」
「だって…ただでさえパパは滅多に家に居ないのに、猫なんて見せたら紗由香のお相手してくれなくなっちゃうじゃない」
「はは。完全には否定出来ないな」
「動物好きですものね」
「そう拗ねるな…また明日には国外なんだから」
「そうね………もっとお話しましょ」
このお屋敷に仕えてから2年半。
まだ新人扱いである私は、久々に帰国した旦那様とお嬢様の団欒の様子を遠巻きに眺めていた。
お2人の周りではベテランの家政婦が甲斐甲斐しく給仕している。
旦那様にお近付きになれるのは、ある程度年数を重ねている人か、文字通り「お気に入り」くらいなもので、私にはまだまだ遠い存在。
仕えること自体はやりがいがあって楽しいと思うから、お近付きになりたいとまではかなくても現状に満足していた。
だが最近、ひとつだけ気になることがある。
そのことについてお嬢様にお聞きしたいのだけれども、如何せん私はまだ下っ端。
話す切っ掛けさえない。
どうしたものかと一人悶々と悩んでいたら、チャンスは突然降ってきた。
「何をしているの?」
庭師達が庭の手入れをしているところに猫がやって来て、ちょっとした一騒動が起きた。
あずまやの上に逃げてしまったので捕獲するのを手伝っていたら、騒ぎを聞いて興味を持ったらしいお嬢様が声を掛けてきた。
「お、お嬢様…。あの、猫が…お庭に入ってきてしまったみたいで、捕獲しようと…」
「…あなた女性なのだから、庭師の男達に任せておけばいいじゃない」
「彼らには自分達の仕事に専念して頂きたいので、私のような下っ端が動かないと」
お嬢様とお話するという新鮮な出来事に、私は自然と微笑んでいた。
それを見たお嬢様は私に「変わったひと」とだけ言い残して何処かへ行ってしまった。
女性は守られるもの、と教え込まれたのだろうか。
……そうだ、猫!お嬢様にお聞きしたいことがあったのだ。
着実に遠ざかって行く後姿を追い掛けて、私は呼び掛けた。
「あのっ、お嬢様っ」
「……なぁに?」
少し驚いた顔で振り向き、私が追い付くまでには体ごとこちらを向いていた。
「私、お聞きしたいことがあって…」
「なぁに?」
「お嬢様が離れで飼われている猫のことなのですが、お名前は何というのですか?」
「………は?」
「いえ、私も猫が大好きなので、特に猫グッズには詳しいんです。だからお嬢様と猫話が出来たらいいな、なんて前々から思っていまして………あ、すみません…下っ端なのに馴れ馴れしいですよね…」
気分の高揚ですっかり忘れていたが、私は一介の家政婦にすぎない。
お気に入りでもないのに、お話したいだなんて…少し調子に乗ってしまったみたいだ。
「…チホよ」
「チホちゃんですか。可愛い名前ですね」
案外普通に喋ってくれるらしい。話し掛けてみるものだ。
「とっても可愛いコよ。私によく懐いてくれるの」
「お嬢様自ら毎日欠かさずお世話してますし、愛情が伝わっているんですね」
「…そうね」
とても嬉しそうに微笑ってくれた。
それだけで、その猫をどれ程可愛がっているのかが想像出来た。
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